私の事務所は東京都杉並区にありますが、その杉並区で擁壁の崩壊がありました。
場所は杉並区堀ノ内1丁目で高さが4~5メートルほどの擁壁が崩壊して、その上に建っていた建物も全壊しました。令和7年9月30日の午後7時頃です。ニュースを見ていたら速報で入ってきたので、私もリアルタイムで見ていました。
【杉並区 第1報】堀ノ内一丁目の家屋倒壊について(2025年10月1日)
土砂やガレキが歩行者通路(幅は1mぐらい)を塞いでいて、結構な崩壊であったことが分かります。それでも、幸いにも通行人はいなかったので人のケガ等はなく、建物の居住者も異変に気づいて家を飛び出したということで大きな事故にはならず良かったのだと思います。
ニュースを見た瞬間、夜の映像でも「方南町あたりだな」と分かりましたが、翌日日中の画像を見たら「ここ善福寺川沿いで散歩コースの近く・・・!」と分かり、休みの日に散歩コースから少し足を延ばして後学のために見てきました。
現地を見た印象は、道路が利用者の少ない歩行者通路で良かった・・です。その前にあるマンション、プラウド方南町の敷地内通路に見えて、あえてこの通路を使わずとも良い(一本すぐ横に別の通り抜け道路あり)ので人通りが少なかったのかもしれません。それが幸いでした。
なお擁壁の方はブルーシートがかけられておりよく確認できませんでしたが、隙間から見ると大きな崩壊の様相でした。過去の現地画像を見ると擁壁は膨らんでおり、かつ割れ目もあり地面の崩壊に耐え切れなかったのだと思いました。「いつ崩れてもしょうがない」という感じでした。
こういった谷底低地沿いは土砂が堆積した有機質土なので軟弱な地盤になります。圧密沈下で建物の重さなどを受け止められず、沈んだその分、横に地面(土)が拡がるので、擁壁に荷重がかかり崩壊するといった構図でしょうか。擁壁は当然のこと、地盤改良や基礎補強工事は不可欠な立地ともいえます。
杉並区は河川が多いので谷底低地が多くあり、この種の話は至るところであります。ちなみに私の自宅の近くも雨の翌日に擁壁が崩壊して「歩いているときでなくてよかった・・・」ということがありました。不動産調査でも気をつける点ですね。
あと、この話ではなぜ擁壁を補修しなかったのか?も問題にされますが、擁壁の補修はかなり費用がかかるので容易にできないんですよね。擁壁を直すのは土地所有者となりますが、費用の負担が重い(過ぎる)のです。公共性を考えてもその費用がなければ・・となります。
私の実家にも高さが3m弱の擁壁がありましたが、直すのに500万円以上かかるので断念したことがあります。最終的には土を値切りして擁壁の高さを2m以下まで落として安全性を確保しつつ対応しましたが、それでも数百万円だったので負担は重く感じました(売却の際に売買価格と相殺しました)。この堀之内一丁目の件は高さが4~5mもあるので違うかもしれませんが、補修費用は1千万円以上かかるのではないでしょうか、それが数百万円でも容易には補修に手が出せないですね。
擁壁は一個人の所有物ですので、税金の投入はできません。杉並区も融資するよという程度です。ですので擁壁の補修費用は自費なんですよね。
将来的には一個人の所有物でも、公共性の高い擁壁は安全性を確保する意味でも税金の一部投入はやむを得ないのではないかと思います。今回は死傷者がおらずに大事に至りませんでしたが、往来の多い道路沿いだったらどうなるか、それを考えると何らか手をつけないといけないでしょうね。
私は不動産関係者ですから、こういった調査も行い、当事者の方々に説明をしていくことでリスク管理をするように促せるように今後もしていこうと思います。
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